グループ学習を活性化させるための役割

2014.08.04
田畑 忍

これまでの学びの中で,幾度となくグループ学習を経験されたと思います。グループ学習には,「コミュニケーション能力が育成される」「楽しい雰囲気で学習できる」「みんなで取り組むのでやる気が出る」などのメリットがある反面,「他人に頼りすぎるようになる」「できる人だけで進んでしまう」「参加しない人への不満が高まる」などのデメリットも指摘されています。
グループ学習の役割には,「リーダー」「会議記録者」「資料作成者」「発表者」等があります。リーダーには,結果に責任を持つことや討論を円滑に進行することが求められます。会議記録者には,メモを取りながら討論に参加し,必要に応じてリーダーらに話の要点や流れを説明することが求められます。資料作成者には,討論の結果をわかりやすく表現することが求められ,発表者には,討論の結果をわかりやすく説明することが求められます。
では,ファシリテーターという役割をご存知でしょうか? ファシリテーターは集団による問題解決やアイデアの創造など,あらゆる知的創造活動を支援,促進します。中立な会議進行役とも言われます。ファシリテーターには,「場をデザインするスキル」「対人関係のスキル」「構造化のスキル」「合意形成のスキル」という4 つのスキルが求められます。一例を示すと,「目的を明確にする」「進め方を決める」「傾聴・介入する」「非言語メッセージを読解する」「発言を要約する」「関係性を図示する」「意思決定の支援をする」など多岐にわたります(参考:日本ファシリテーション協会Web ページ)。
私がファシリテーターという言葉に出会ったのは,「グループ学習で本当に理解が深まったのか(議論が好ましい方向に進んだのか)わからない」という言葉を聞き,グループ学習をより良い方向に導く方法を探していた時でした。ファシリテーターが役割を果たせば,先程の学生の疑問やグループ学習のデメリットは解消できると考えられます。
しかし,一度にすべてのスキルを身に付けるのは困難です。そこで私は,限定的な役割を与えたファシリテーターをグループ学習に取り入れるという試みをしています。これは,私の恩師らのグループのアイデアです(例えば,白井靖敏他「グループ学習の現状とファシリテーターの役割」名古屋女子大学紀要)。自身の知的創造活動のためにも,教員になった時のグループ学習を取り入れた指導のためにも,ぜひ,ファシリテーターの役割を知り,身に付けてほしいと思っています。

プロフィール

  • 通信教育部 教育学部教育学科 助教
  • 三重大学大学院 教育学研究科学校教育専攻 修士課程修了。教育学修士。
  • 三重大学大学院 工学研究科システム工学専攻 博士後期課程修了。工学博士。
  • 専門は、教育工学、教育方法、授業評価など。
  • 皇學館大学・名古屋女子大学非常勤講師などを経て現職。
  • 論文に『ステップごとの解説の作成と相互評価をとり入れた問題づくり授業』『ワークブックを用いた演習を支援するシステム-教師による直接指導と同等の支援を目的とした演習支援システム-』などがある。
  • 学会活動:日本教育工学会,大学教育学会,コンピュータ利用教育学会 会員