3月23日、24日「TAPフォーラム2019『アドベンチャー教育――未来へ向けてのネクストステージ』」を開催
玉川大学・玉川学園では、1997年に「強い心を持った子どもたちを育てる」ことを願い、21世紀のプロジェクトの一つとして、アドベンチャー教育の実践と研究を始めました。2000年には、国内の教育機関では初めてとなる、校内にアドベンチャー教育のための施設(チャレンジコース)を設置し、一貫教育の課程に沿った取り組みを始めました。アドベンチャー教育で大切にしているのは、「体験からの学びにおいて、過程(プロセス)を重視すること」です。今回のフォーラムでも、「なぜアドベンチャーなのか?」、「何をもってアドベンチャーなのか」、「どこに向かっているのか」、「何をもたらすのか?」といった原点を、3人のゲストの方々や参加者約180名の皆さんと考えた2日間でした。
1日目は、パネリストとして世界で活躍するさまざまな分野のアドベンチャー教育者をゲストにお迎えし、発表していただきました。
髙野孝子氏(早稲田大学教授/特定非営利活動法人ECOPLUS代表理事)
パラシュートで北極点に降りる姿やアマゾンでのカヌーといった写真などを披露しながら「アドベンチャーは自分にとっての旅であり、地球のエネルギーを体で感じること」と話しました。またご自身で立ち上げたECOPLUSでのミクロネシア、ヤップ島での日本人学生とヤップ島の青少年との交流から「場」から学ぶPlace Based Education(場の教育)の重要性を紹介。髙野氏は「冒険とは自らワクワクすることにリスクをとってやってみる」と語りました。
林壽夫氏(プロジェクトアドベンチャージャパン代表/株式会社野外計画創設者)
「チャレンジコース」の壁を乗り越えようとする場面の写真を映し出して語りかけました。あるグループの1人の生徒は仲間と溶け込めずにいましたが、活動を通して、徐々に仲間と支え合って困難に立ち向かう姿が見え、活動を終えるころには仲間と一緒にサポートに尽くしていたそうです。林氏は、「アドベンチャーには不思議な力がある。人間は本来、助け合う力を持っているが、アドベンチャーはその力を揺さぶってくれる」と話しました。
佐々木豊志氏(青森大学教授/一般社団法人くりこま高原自然学校代表)
ご自身の中学時代の体験から、当時は元気な生徒が多く、担任の教師は教室ではエネルギーが有り余ってしまうと判断し、登山などの野外体験を通じて、生徒と真剣に向き合ってくれたことがアドベンチャーのきっかけだったと話しました。その後、自ら自然学校を設立し、地域とのつながりの中から、アドベンチャーにおける「コンフォート・ゾーン(居心地の良い場所)」を越えてみると、自分が変化していくと共に、周囲も変わっていくと、話しました。
次のパネルディスカッションは、難波克己前TAPセンター長もステージに登壇し、会場の参加者と意見交換の時間となりました。会場からの「アドベンチャーの定義とは?」という質問に対して、パネリストの方々から「怖いと思っていることに挑戦し、焦らないでやること」、「できるか分からない初めてのことに挑戦する。自らやることが大事」、「生き方の視点を変えること、継続していくこと」と、定義に留まらず、アドベンチャーに対する心構えにもふれて答えていました。
全国から教員をはじめ、さまざまな職種でアドベンチャー教育を実践されている方々が参加していました。真剣なまなざしで頷いている参加者の様子が、とても印象的でした。今回のパネルディスカッションが、参加者一人ひとりの「アドベンチャー」を深めた時間になったのではないでしょうか。
2日目の午前は、2018年度で退任した難波克己前玉川大学TAPセンター長の特別ワークショップを、午後は4つの分科会を行いました。難波前センター長による特別ワークショップは、「The Art of Gathering」と銘打って、「集まること」をテーマにした当日限定のセッションが繰り広げられました。『難波マジック』ともいえるセッションに、全国から集まった参加者が、人が集って共に笑い合い、ワクワクし合う感情を大切にすることを学びました。
ある参加者は、「セッションを通して、自分の狭い世界の外にいる、見知らぬ人と知り合い、話し合うことの楽しさを味わえてよかった」と興奮気味に話していました。
昼食の休憩を挟んで、午後からは4つの分科会が始まりました。
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- ●分科会1
アドベンチャー教育の未来(難波克己 前玉川大学TAPセンター長)
- ●分科会1
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- ●分科会2
教育課程におけるTAPの活用―特別の教科道徳と特別活動を中心として―(川本和孝 玉川大学TAPセンター)
- ●分科会2
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- ●分科会3
新チャレンジコース体験を中心としたTAP(村井伸二・永井由美 玉川大学TAPセンター)
- ●分科会3
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- ●分科会4
はじめてのTAP(白山明秀 玉川大学TAPセンター)
- ●分科会4
分科会2では、「道徳」の教科化は、小学校では2018年度から、中学校は2019年度から始まります。玉川学園では、2018年度からTAPを活用した道徳の授業を展開。その過程と実際の内容、課題について、参加者と意見交換を行いました。
中学校教員の参加者は、「読み物資料では、道徳を真に理解し、行動に反映することは難しく、玉川学園の試みは、非常に参考になる」と話していました。
分科会3と4は、玉川学園内のチャレンジコースを使って体験。とくに分科会3では、2018年10月に新設した「チームチャレンジコース」で、7、8人で1グループを組み、体験しました。ヘルメットなどの安全装備を装着すること、事前に入念な安全指導が行われることなどを現場で実践。ほぼ初対面という人同士でグループを組み、地上5~8mある高所のコースを渡り切るのは、非常に困難なことです。けれども、上り始めた頃は「怖い!」と言っていた参加者の1人が、誰よりも率先して声を出し、手を差し伸べている姿が印象的でした。また、コースを渡るにつれ、次第にグループの結束力が高まっていく様子が見られました。参加者の1人は、「最初は遠慮がちで声を出すのも躊躇われたが、誰かが声を上げなければと、思い切ってきっかけを作ってみました。その後は、お互いに支え合ったり、助けたり、とても自然に動くことができました。体験してみて、このコースの意義がよく分かりました。とても楽しかったです」と目を輝かせて話していました。
各分科会を終えた参加者が再び一堂に会し、まとめの「振り返り」を3、4人のグループになって行いました。この「振り返り」がアドベンチャー教育でも重要です。それぞれが体験を通した学びを語り合い、確認し合うことが成長につながることでしょう。
大勢の参加者の皆様のおかげで、「TAPフォーラム2019」は、盛況のうちに閉会となりました。次回もよりたくさんの方に参加していただけることを期待します。