平成30年度 大学院農学研究科 第1回研究談話会
Dr. Sudhir M. Bobde(インド、ウッタル・プラデーシュ州農業省首席秘書官)来学!
―インドの農林水産業と日本の関わりを講演
2018.04.11
大学院農学研究科では、昭和59(1984)年から34年間にも亘り毎年数回の研究談話会を継続しています。異なる専門分野をもつ有識者の話を拝聴して、大学院生や研究者間の学識の幅を広げ豊かにし、学際的な面からの相互理解を図ることを目的としています。
平成30年度の第1回研究談話会は、4月5日(木)14:00~15:30に開催されました。1991年の経済自由化以降、急速な経済成長を遂げ、国際社会から「世界一の成長ポテンシャル」を有すると言われているインド国内で最大の人口を誇るウッタル・プラデーシュ州(UP州)の農業省首席秘書官(Principal Secretary)のDr. Sudhir M. Bobdeをお迎えし開催しました。
Bobde博士は、2015年に日本の政策研究大学院大学にて公共政策学の博士号を取得後、インドへ戻り、州人口2億人を超えるUP州政府の首席秘書官に就任した日本とも関係の深い方です。州政府の要として農業・水産業・畜産業行政を掌り、中央政府、世界銀行との折衝なども州政府代表として行っています。
そのBobde博士が来日の際、かねてより親交のあった石川晃士准教授が農学研究科の談話会での講演の可能性について打診したところご快諾下さり、来学が実現しました。石川准教授はグローバル・フードバリューチェーンの研究で2017年度にインドを訪問しており、2018年度からは研究の一環で、UP州への国際協力機構によるODAを活用した民間企業海外展開支援事業にも関わることになっています。
講演は、“Scope and Potential for Japanese Investment, Technology Transfer, R&D in Agriculture & Allied Sector in Uttar Pradesh for Doubling Farmers’ income in 4 years”
(4年間でインド、UP州の農家の所得倍増を実現するための農業及び関連産業における日本からの投資・技術移転・研究開発のスコープとその可能性)というタイトルで、丁寧にインドの現状、そして農林水産業の発展の可能性、日本の投資機会をご説明下さいました。
インドの現状に関しては、インドにおける果物、野菜、生乳の生産量は世界的にトップクラスにあるものの、インフラ整備等の遅れが原因で生産性に関しては東南アジア諸国と比較しても低位であること、農村部には貧困人口が多くいることを挙げられた中で、日本の高付加価値を生みだすモノづくりのスキル、英米とは異なる日本の先進的な知見(文化・マインド)、それらを含む日本の産学官連携での支援(民間企業の進出、研究技術移転)がインドの農林水産業の発展、及び貧困問題の解決への大きな起爆剤となりうることを強調されました。
学生、大学院生からの質問にも丁寧に応対して下さり、学生が英語で意思の伝達を試みる姿にELFの成果の一面を感じました。我々が普段知ることのできないインドの農業・農村開発のポテンシャルについて活発な議論が展開され、とても有意義な交流となりました。
また、今回は学外からの参加希望者も受け付けたことで、多数の企業の関係者も出席され、談話会を通じた大学の社会貢献にもなりました。
特別戦略的グローバル・パートナーシップを通じて日印関係がますます発展することが期待される中、今回の談話会でのお話はこれからを担う若い世代の視野の拡大に繋がったことと思います。
談話会後には、Bobde博士に本学内のFuture Sci Tech Lab(植物工場研究施設)をご案内しました。植物の生育に必要な光、二酸化炭素、水などを完全に制御し、屋外の気候条件に左右されずに安定的な生産が可能であること、室内のクリーンルーム栽培により生産物を洗わずにそのまま食べられるという水耕栽培技術にとても驚かれ、大変興味を持たれていました。インドの農林水産業の発展にも、これまで玉川大学で培われた学内の研究成果、技術が具体的に役に立つ日も近いかもしれません。