ミツバチの女王蜂と働き蜂では、脳内物質『ドーパミン』の量が成長過程で大きく異なっていた!――世界で初めて解明、国際学術雑誌に発表

2018.10.31

セイヨウミツバチの女王蜂(下)と働き蜂(上)

セイヨウミツバチの巣内には産卵を専門に行う女王蜂と育児や女王の世話、巣の防衛や採餌等を行う働き蜂がいます。どちらの個体も雌卵から発生しますが、幼虫期の発生過程で与えられる餌の違いにより、二つのタイプに分化し、成長していきます。女王蜂と働き蜂の行動の違いは脳の構造や生理の違いであり、その違いの解明は長年、研究者が追い求めていた課題でした。

この度、本学農学研究科 佐々木謙教授と日本学術振興会特別研究員PD 宇賀神篤博士(現:JT生命誌研究館 奨励研究員)およびミツバチ科学研究センター 原野健一教授は、ミツバチの脳内で合成されるドーパミンという物質の量が女王蜂と働き蜂で大きく異なることに注目し、脳内のドーパミン量やドーパミンの合成や反応に関係する遺伝子の発現量について、蛹期から成虫期にかけて調査しました。

その結果、女王蜂の蛹の脳内ではドーパミンの合成に関わる遺伝子の発現量が多く、脳内のドーパミン量が働き蜂の3~4倍多く存在することを発見しました。また脳内でドーパミンを合成する神経細胞群の分布は、女王蜂と働き蜂との間で大きな違いがないことも分かりました。つまり、女王蜂の脳内ではドーパミン細胞群が働き蜂よりも多く存在するのではなく、女王蜂と働き蜂が共有する細胞でドーパミンが多く合成されていると考えられます。一方、ドーパミンの反応に関わる受容体の遺伝子は女王蜂で少なく発現するものがあり、今後その役割が注目されます。

このように、セイヨウミツバチの女王蜂と働き蜂における脳の生理的違いを生み出す仕組みを世界で初めて解明。この研究成果は国際学術雑誌「PLoS ONE(2018年10月29日掲載、オープンアクセス)」に発表されました。

論文タイトル

Caste-specific development of the dopaminergic system during metamorphosis in female honey bees

著者

Ken Sasaki*(佐々木 謙):玉川大学農学研究科、玉川大学学術研究所ミツバチ科学研究センター 教授
Atsushi Ugajin(宇賀神 篤):日本学術振興会特別研究員PD、現:JT生命誌研究館、奨励研究員
Ken-ichi Harano(原野 健一):玉川大学学術研究所ミツバチ科学研究センター教授

  • 責任著者

掲載雑誌

PLOS ONE (2018) vol. 13, e0206624
Doi: 10.1371/journal.pone.0206624

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