玉川大学脳科学トレーニングコース2014が開催されました
2014年6月26日(木)から6月28日(土)の3日間にわたり、脳科学研究所において、「玉川大学脳科学トレーニングコース2014」が開催されました。このトレーニングコースは、脳科学の発展と普及を目的として、脳科学を志す学部学生、大学院生、若手ポスドクを対象に、学際的な研究手法の基礎と応用を実習で学んでもらうことを目的としています。
第4回目となる今回のトレーニングコースでは、6つの実習コースに全国から計106名の応募があり、書類選考で選ばれた27名の方が受講されました。
実習コース
1.ラットのマルチニューロン記録と解析法コース(受講4名)
担当:礒村宜和
2.霊長類動物の行動・神経計測・解析技術コース(受講6名)
担当:鮫島和行、坂上雅道、木村實
3.ヒトのfMRI基礎実習コース(受講6名)
担当:松元健二、松田哲也
4.赤ちゃんの脳波計測と解析の基礎コース(受講4名)
担当:佐治量哉、岡田浩之
5.逆転写定量PCR法による遺伝子発現解析コース(受講3名)
担当:佐々木哲彦、原野健一、佐々木謙
6.社会科学実験入門コース(受講4名)
担当:高岸治人、山岸俊男
共通コース
MATLABプログラム講習会(1日目)
開会式・懇親会(1日目)
ランチョンセミナー「ヒト脳研究の未来」(3日目)
講師:坂井克之(玉川大学脳科学研究所)
Jam Session~分野を越えて思考の調和を奏でよう~(2日目)
担当:酒井裕
閉会式(3日目)
受講者の皆さん、3日間の実習お疲れさまでした。今回の脳科学トレーニングコースにより、一人でも多くの受講者が将来の脳科学の担い手となって活躍してくれることを心から期待しています。
なお、集合写真(全体、コース別)をご希望の受講者の方は、事務局までメールでお知らせください。
- 主催玉川大学脳科学研究所
- 共催玉川大学大学院脳科学研究科
玉川大学大学院工学研究科
玉川大学学術研究所ミツバチ科学研究センター
心の先端研究のための連携拠点(WISH)構築
文部科学省科学研究費補助金「予測と意思決定の脳内計算機構の解明による人間理解と応用」 - 後援文部科学省科学研究費補助金「包括型脳科学研究推進支援ネットワーク」
- 協賛小原医科産業株式会社
バイオリサーチセンター株式会社
マスワークス合同会社
受講者の声
ラットのマルチニューロン記録と解析法
2014年6月26日から28日の3日間、礒村先生の「ラットのマルチニューロン記録と解析法」に参加をさせて頂きました。 私は、微小電極アレイを用いてラット神経細胞に対する薬理刺激の影響を電気的に評価するというin vitro研究を行っています。実際の生体を用いた研究方法を学びたい、知りたいという気持ちで応募しました。毎年応募倍率が高いこと、有名な大学の方々が応募してくるということなので、ダメでもともと!という気持ちでおりましたが、嬉しいことに採用をして頂きました。
【1日目】
礒村先生から3日間の実験スケジュールや研究に関する背景、内容を基本的な部分からレクチャーして頂きました。音による条件付けをして、効率的なオペラント学習を可能とするレバーと報酬となる水分が出てくるスパウトが一体化となったスパウトレバー装置を用いたラットの前肢運動訓練を見学しました。in vivoの実験を目にするのはこれが初めてだったので、非常にワクワクしました。 夜の懇親会で色々な人と出会い研究に関する話、コースの話を聞くことができ非常に充実感溢れる時間でした。
【2日目】
午前中、前肢運動の行動タスク中のラットのマルチニューロン記録を見学させていただきました。 午後は、ラット頭部に固定器具を取り付ける手術を見学しました。細かい部分も懇切丁寧にレクチャーして頂きました。また、テトロード電極、コネクターに関してどのような製品を使って、どのように作製をするかという作成方法も詳しくレクチャーして下さり、買うだけではなくて自ら作成することの意義を教えて頂きました。 夜は、Jam sessionが行われ、各グループで仮想プロジェクトを立案し発表しました。私のグループは、大学院生、学部生、それ以外の職に就かれている方が、脳科学だけではなく、医学、経済学、文化人類学、法学など様々なバックグラウンドをもとに話し合いをし、「愛」というテーマの発表をしました。4チームそれぞれのグループが面白いテーマで発表し、優勝グループに贈呈される「たまがわアイスクリーム」をかけて競いました。見事、私のグループが優勝することができ「たまがわアイスクリーム」をGET出来ました。
【3日目】
実験で得られた細胞外記録のデータから多数のニューロンのスパイク活動を分離するスパイクソーティングを学びました。EToS(Efficient Technology of Spike-Sorting)を用いて、操作の仕方を基礎的な部分から教えて頂けて、また今後の研究の参考となりました。 昼は、「ヒトの脳研究の未来」という題目のランチョンセミナーを受講しました。脳科学研究をどのように行うべきか?どこが問題か?を考える時間となりました。 コース終了後に礒村先生と個人的にお話をさせて頂いた時に、「今後も何か分からないことが出てきたときは遠慮なく聞いてね」というお言葉を頂き、コースだけではなく今後も関わることが出来ること、礒村先生の素晴らしい人格に非常に感銘を受けました。
今回、礒村先生のコースに4名の受講者がおり、うち3名が日頃からin vivoで実験をしている方々でしたので不安な部分はありましたが、礒村先生、佐村先生、齋木先生、礒村研究室の学生の皆さんが基礎的な部分も解説して下さったお蔭で有意義な時間を過ごすことが出来ました。3日間、余すところなく研究室での研究内容を教えて頂けたことは非常に貴重でかけがえのない経験となりました。最後にこの場をお借りして、礒村先生、礒村研究室の方々、玉川大学 脳科学研究所の関係者の皆様に心より御礼申し上げます。ありがとうございました。
(成蹊大学 丸山拓真さん)
霊長類動物の行動・神経計測技術
私は今回、霊長類動物の行動・神経計測・解析技術コースに参加し、霊長類研究の現場を勉強させていただきました。
一日目は講義を受け、筋電位測定を体験しました。まず鮫島先生に霊長類を研究する意義と霊長類研究者の暗黙知について講義していただき、論文には細かく載っていないような頭部固定法・電気生理計測法について学ぶことが出来ました。その後木村先生に霊長類を研究するときの倫理的配慮や筋電位と脳活動の両方を記録して行動と脳を統合的に研究した成果を紹介していただきました。実際自分たちの筋電位を測定する実習では霊長類班のメンバーの個性が発揮され笑顔の筋電位を測ってみよう!とテーマを設定して盛り上がっていました。その後、坂上先生に眼球運動の神経回路と測定方法、それを用いた報酬とサッケードの実験について詳しくお話いただきました。
二日目は実際に霊長類を訓練する様子の見学と、組織染色の実習を行いました。まず、鮫島先生から霊長類の訓練について講義していただき、まず報酬のジュースを飲むところから少しずつ訓練していくことで、人間でも少し難しいと感じるようなかなり高度なタスクをこなせるようになると聞いて驚きました。訓練の過程で時間をかけて少しずつ霊長類が学習していく様子を実際に見ることで、知性とは何かという問いに霊長類研究が大きな役割を果たしてきたことを感じました。また、組織染色を体験したことや最新の神経回路標識法を学ぶことで化学物質や遺伝子レベルの脳研究にも触れることが出来ました。二日目の夜にはJam Sessionという他の班の参加者との交流会がありました。わたしの班には臨床に関わっている方が多く、基礎と臨床のつながりについて考える貴重な時間を過ごせました。
三日目は実際の神経活動のデータを使ってMatlabで解析する演習を行いました。丁寧に解説していただいたおかげで、神経活動のデータの処理の仕方についてイメージをつかむことが出来ました。また、鮫島先生自身の研究もご紹介いただき、今までの実習内容を経て論文の内容を聞くと理解の深さが全然違うことを実感できました。
トレーニングコースは三日間とは思えないほど濃密な学びの場でした。ここで学んだことを今後の研究にも生かしたいと思います。最後にお忙しい中丁寧な講義をしてくださった先生方、実験の様子を見せてくださった研究員の方々、食事や交流会を企画運営してくださったみなさま誠にありがとうございました。
(東京大学 加藤郁佳さん)
ヒトのfMRI基礎実習
私は所属する大学院で、大脳基底核の神経回路を詳細に明らかにするため、齧歯類を対象に神経核間の繋がりを調べる研究を行ってきました。設けられた6つのトレーニングコースの中でも、ヒトのfMRI研究は自分の研究テーマとは距離のある分野で、研究対象もラットやマウスとヒトでは大きな差がありました。自身の研究は齧歯類を対象としたより基礎的なものですが、目指すところはヒトの神経疾患の治療への貢献です。そこで、何かこれらの研究のギャップを埋めるヒントを得たいと思い、fMRIコースに応募しました。
一日目はfMRIで脳の撮像を行いました。受講者が被験者または試験者となり、成功報酬が用意された状況で行うStop Watch課題時の脳活動を測定しました。今回、自身は撮像出来ず残念でしたが、今後fMRIの測定者となり自らの手で画像解析する機会はまず無いと考え、初日から高いモチベーションで実習に取り組めました。
二日目は初日に撮像した脳画像のデータ解析について教わりました。ソフトウェア(MATLab SPM8)を用いて、個人のデータを補正し基本脳に標準化するなどの過程を踏み、課題に関連した脳の賦活マップを作成したのです。このマップからは、報酬系に関わる線条体の活動が高まっている様に観察されました。夜のJam Sessionでは多様な分野の参加者との交流が実現しました。同じ脳科学研究を志す立場の彼らと知り合い、活発な議論を交わした時間は、研究者の卵としてかけがえのない経験になったと考えます。
三日目は個人の賦活マップを元に被験者全員の平均を算出しました。個人のデータを見る限りでは特徴的だった脳活動が、n数を増やすと大きな変化として観察されにくいことが分かりました。このように一連の流れを学び、fMRI研究で得たデータをどのように扱い、解釈するかというイメージをより具体的に得られたと感じます。
今回の実習を通じて、松元先生をはじめとする先生がたの丁寧なコーチングのお蔭で、脳画像研究に関しては初心者の私でも操作の意味を理解しながら学べました。fMRIを用いた研究の特長を学び、課題中のヒトの脳活動を可視化出来ることの強みを十分に理解出来ました。一方で、強力なツールであるfMRIでも被験者の条件によってはデータが取れないなどの弱みを併せ持つ現実も知りました。玉川大学で過ごした三日間は、脳科学研究の未来の明るさを実感させ、自身の研究への意欲をかき立てる刺激的な体験になったと思います。
(同志社大学 水谷和子さん)
赤ちゃんの脳波計測と解析の基礎
現在、私は臨床心理士として発達障害や精神疾患を持つ方の支援を行い、大学院ではヒトの心理的時間について研究しています。これまで、主に質問紙法や実験法を用いて研究を行ってきましたが、研究の幅を広げ発展させていくためには脳科学からのアプローチが欠かせないと考えるようになり、乳幼児の脳機能計測に必要な基礎知識と手技を学ぶため、脳科学トレーニングコースに参加しました。
1日目は、脳波測定を行うために必要となる研究倫理、環境設定、基礎知識を学びました。まず、人を対象とする研究を行う場合、研究者は研究に関わるすべての個人の生命、尊厳および基本的人権を重んじ、科学的かつ社会的に妥当な方法・手段で、その研究を遂行しなければならないことや、研究実施にあたっては、安心かつ安全な方法で行い、研究対象者の身体的もしくは精神的負担または苦痛を最小限にするよう努めなければならないことを確認しました。次に、電磁波計測器を用いて脳波計の周囲にある物体のうちどのような物からどの程度の電波ノイズや磁場ノイズを発生させているのかを確認し、その電磁ノイズがどの程度脳波計測に影響を与えるのか、そして、どのようにしたらノイズを軽減できるかということを体験的に学びました。この経験を通して、脳波を計測するためには、測定前の環境を丁寧に整えておく必要があることを知りました。さらに、赤ちゃんの人形を用いて、体重や頭囲の測り方、皿電極を付ける位置、付け方などの練習を行いました。
2日目は、赤ちゃんラボの調査協力者である3組の母子に協力いただき、睡眠時の赤ちゃんの脳波を計測しました。佐治先生の指導のもと、受講生一人ひとりが責任を持って体重、頭囲をはかり、その後、赤ちゃんに脳波の電極をつける実習をしました。前日に何度も練習していたにも関わらず、実際の測定は緊張や焦りもあり、思っていた以上に時間がかかりました。そして、赤ちゃんや母親に配慮しつつ、手際よく測定位置を決めて電極をつけて効率的に測定を行うことの大切さを学ぶことができました。
3日目は、脳波解析の理論やMATLABによる解析方法について学んだ後、2日目に計測したデータの解析を行いました。私はこれまでMATLABを使ったことはありませんでしたが、佐治先生が丁寧に基礎からゆっくりと教えてくださり、ひととおり解析を体験することができました。
以上のように、脳波計測の前(1日目の倫理、前準備、基礎知識)、脳波計測そのもの(2日目の赤ちゃんの脳波測定)、脳波計測の後(3日目の解析)といったフルコースの実習を通して、脳波計測に必要な基礎知識を体験的に学ぶことができ有意義な実習でした。また、懇親会やJam Sessionでは、脳科学研究所の先生方や全国様々な大学から集まった受講生と知り合うことができました。さらに、同じコースの受講生とお互いの研究についてディスカッションすることができたことも良い刺激となりました。このように脳科学をキーワードとして、最新の研究に触れることができ、さらにはグローバルな交流が持てる機会は、全国的にみても稀有なものと思われます。今回得た知識や技術、人とのかかわりなどすべての経験を生かして、自分自身の研究を発展させていく自信と勇気をもらうことができました。
最後になりますが、トレーニングコースを開催してくださった玉川大学脳科学研究所の先生方、赤ちゃんコースで丁寧に教えていただいた佐治先生、懇親会でお話してくださった松田先生、実習をサポートしてくださった大学院生の亀山さん、脳波計測にご協力くださったお母様と赤ちゃんに深く感謝いたします。
(国際基督教大学 森田麻登さん)
逆転写定量PCR法による遺伝子発現解析
じつは、実験社会科学サマースクール・ウインタースクールで、すでに玉川大学さんには、二度おじゃましたことがあります。そのさい、脳科学トレーニングコースというものをされていると聞き、機会があったら、ぜひ受講いたしたいとかねがねおもっておりました。 無事、申請がとおり、当日まいりましたら、みなさん、若いかたばかりで、うん十歳の教員は、私だけでした。申請どおり上記のミツバチコースを受講することができました。
一日目、原野先生のご指導で、生きているミツバチの観察と捕獲。飼育の原野先生とハチとが、非常に良い人間関係(虫人関係?)のようで、素手でハチ箱のブレードをとりだしてもまったく刺されませんでした。ハチさんたちカワイイ!。といいつつ、採餌バチと育児バチを分別採集して、佐々木哲彦先生のラボへ。CO2で、ハチさんたちにねむってもらって、ハチたちは、スチロールのクーラーの中のぶっかき氷のうえでおねんね。その中から前者タイプのハチと後者タイプのハチを一匹づつとりだして、頭部を切断。オオー!、でもけっこう平気。その頭部を、ひとつづつ歯医者さんのつかう粘土状のベ-スに虫ピンで固定します。先生は、らくらくされますが、当方がやるとうまくいかない。昆虫採集少年やっていればよかった!。なんとかピン止めして、ニコンの顕微鏡でみながら、触覚の出ていたアナを目安に頭部をベロンと開頭します。するとスジコをずっと小さく、青くきれいにしたような下位咽頭腺があらわれます。わかいハチのは感動するほどキレイ!。これがターゲットで、いくつかチューブに採集します。これがまた、私がやるとすぐきれちゃって。加齢ハチのはなんか元気ない感じ。これも比較サンプルなので、別のチューブに採集。
二日目、昨日採集したRNAに逆転写などの作業をほどこします。先生もおっしゃってましたが、ほとんどは無色透明な試薬を定量くわえては遠心分離器で、遠心し、漉したり、漉し残したりの繰り返しです。ちょっと気を抜くと、プロトコールのどこをやっていたのかわからなくなるし、二種類のサンプルを混同するので、注意。とくに当方は、ピペットの目盛を一桁まちがえるミスを二回ほどやってしまいました(ピペットはじめてなので)。が、その度ごとに、先生の「目分量」に救われ、「チューブのこの量は一桁すくないのでは」のご注意で、やりなおし、なんとか致命的なミスをのがれることが出来ました(と、その日はおもってました)。最後にできあがった試料を、qPCR用のサーモサイクラーにいれて、その日はおわり。やれやれ。
最終日、PCRの結果の確認、2×2の4本のチューブが、それぞれ、高・低、低・高のカーブを描いてくれるはずなのですが、なーんか、3本目のチューブでミスったみたい!。出力されたカーブは、高・低、底ばい・中、でした。まあ、はじめてにしてはこんなもんでしょう。
ちょうど、ペットの犬がしんでしまった時とぶつかっていた私は、バイオにめざめてしまいました!。タカラバイオ製の大腸菌か何かを飼いたくなり、また、DNAをこの目でみたくなり、帰宅するなりamazonで、「バクテリア培養キット」(2千円)、「DNAすいすいfor kids」(2千円)を、注文したのでした。
両佐々木先生、原野先生、サポーターの中村さん、ほかスタッフのみなさま、本当にありがとうございました。日本で一人目の、ジーノソシオロジスト目指して頑張ります!
(鹿児島大学 櫻井芳生さん)
社会科学実験入門コース
私は、今年初めて設置された『社会科学実験入門コース』に参加しました。
"社会科学"に興味は持っていても、実験上の細かい手続きやリアリティの出し方など論文を読んでも分からない部分があります。このコースは、そうしたことを直接学べる貴重な機会でした。
1日目は、まず、高岸先生が過去に実施された実験を紹介して下さり、実際に実験を行う上で問題となること、さらには、論文の審査者が気にするポイントは?といった、具体的なお話を聞く事ができました。その後、小泉先生の丁寧なご指導のもと、visual basicを用いて、先制攻撃ゲームという実験のプログラミングを始めました。
2日目は、初日に引き続きプログラミングをみっちり教えて頂き、夕方には実験施設の見学の時間がありました。いかに実験状況で社会場面のリアリティを出すか、実験者側が実験をどのように進めていけばいいのか、を学びました。その後、全コースの先生方と受講生が一堂に会して、Jam Sessionが行われました。各コースから1、2名が1つのグループになって、問題設定からその解決までを考えました。初めて話す人同士で、興味のある話題を引き出し合い、自身の興味と繋げて、相乗効果を狙って話を膨らましていく、という課程は大変面白かったです。
3日目には、プログラミングも完成しました。プログラミングを体系的に学ぶ機会がなかったので、大変貴重な経験になりました。また、この日は山岸先生との対談の時間がありました。私も含め、受講生は皆緊張気味だったように思います。しかし、先生が気さくに話かけて下さって、皆ぽつりぽつりと、自分の興味のあること、先生に聞いてみたいことを話すことができました。先生の最新の興味の話も伺うことができてワクワクする時間でした。
私の参加したこのコースは、修了時に自分で一通り実験ができるようになっている、ということが意識された充実した内容でした。質問を気軽にできる雰囲気もありがたかったです。そして、3日間を通して、様々な研究をしている人々と交流し、思考を活性化してくれるようなイベントも盛り込まれていました。実習期間中、常に手厚いご指導とサポートをして下さり、有意義な時間を提供して下さった玉川大学脳科学研究所の先生方、皆様に、心よりお礼申し上げます。
(名古屋大学 遠山朝子さん)
Jam Session〜分野を越えて思考の調和を奏でよう〜
私はfMRIを用いた神経経済学に関する研究を行いたく、大学で神経科学を専門に勉強しています。しかし私の所属する大学では学べる環境も、使える機材も限られており、特に神経経済学についてご指導頂ける場は日本で限られているため、社会性の神経科学に関する研究で有名な玉川大学でfMRIに触れられる貴重な機会だと思い、玉川大学トレーニングコースへ応募しました。
まず、1日目には私たちが実際にfMRIに入り、次の日から使用する実験データを取得しました。fMRIに入る貴重な機会であったと共に、疑問が浮かぶ度に適宜、教授や講師の方々に質問することが出来たので、本当に多くのことを疑問なく学ぶことが出来ました。また、2日目にはSPM8を利用して、初日に取った実験データを個人レベルで解析しました。そこでも同様に受講者6人に対して多くの講師がついていてくれたため、分からない部分や解析手法に関する質問を適宜行うことが出来ました。お陰で、1つ1つの解析プロセスをしっかりと理解することが出来ました。3日目には各自が分析したデータを集め、集団分析を行いました。ここでも適宜色々な質問をすることが出来、3日間という限られた時間の中で、実際に実験を行い、それらのデータを分析するところまで学ぶことが出来ました。
このトレーニングコースの中で私が取り上げたいのは、2日目の夜に受講生全員で行ったJAM SESSIONです。JAM SESSIONでは他コース受講者も含めた上で、全体を4つのグループに分けていたため、多くの分野の方々と幅広い分野の知識を絡めながらディスカッションすることが出来ました。今回のテーマは「新しい研究テーマ」についてで、グループごとに議論し合い、最後にプレゼンテーションを行いました。集まったメンバーは分子レベルで神経科学について勉強している人から、心理学や文化人類学について学んでいる人まで、本当に様々なバックグラウンドの人がグループ内に集まっていました。さらに、ただバックグラウンドが異なるだけでなく、共通点として全員が脳に関心があります。そういった様々な視点から脳について解釈し、議論し合う時間はまたとなく、お互いの知識を出し合うことで普段の会話からは生まれないような新しい切り口で「脳」について考えることが出来ました。脳を学問するためには脳という学問はなく、そこには物理・化学・生物・統計・心理学…をはじめとする多くの学問分野が必要です。もし仮に自分で1つの学問を突き詰めたとしても他学問との交流なしには脳について深く追求するにも限界があるでしょう。是非とも自分が研究者になった際にもこの心持ちを忘れずに多くの研究者と協力することで、新しいイノベーションを起こしていきたいと思いました。
私は今回大学院生に囲まれて、1人だけこのコースに大学3年生で参加しました。確かに最初は勇気が必要でしたが、多くの大学院生と接し、実際の実験に触れられたことは勉強に対するモチベーションをさらに掻き立ててくれるものでした。ここでの経験はこれからの研究にとても生きており、是非とも早い段階で参加をすることをおすすめします。
最後になりましたが、このような学びが出来る場を提供してくれたこと、多くの指導をして下さった講師の方々にお礼を申し上げると共に、この経験を自身の研究に生かしていきたいと思います。
(慶応義塾大学 松崎裕太さん)