世界初!TSCPチームが「マグネシウム空気電池(蓄電池無搭載型)」による電気自動車走行実験に初めて成功しました
本学のTSCP(Tamagawa Sustainable Chemistry-powered-vehicle Project)チームは、2017 年8月9日(水)から11日(金)まで秋田県大潟村ソーラースポーツラインで開催されたWGC(World Green Challenge)2017に出場。ソーラーカーグリーンフリートチャレンジ フリークラス部門において、世界で初めて蓄電池を介さないマグネシウム空気電池※を動力源とした『Mg空気電池実験車両(仮)』の走行実験に成功しました。今回の取り組みは、『マグネシウム循環社会推進協議会』にご協力いただき実現しました。
- この電池は、燃料電池の一種です。負極に金属マグネシウムを、正極に空気中の酸素を使用し、電解液としては食塩水を使用します。非常用スマートフォン充電用電源として市販されているものを搭載しています。
この『Mg空気電池実験車両(仮)』は、市販されている電気自動車Girasole(ジラソーレ)をベースにして、新しくマグネシウム空気電池(以下Mg空気電池)用の電装システムに搭載しなおしたものです。車両のMg空気電池は、藤倉ゴム工業株式会社から提供いただいたものを使用しました。現在、市販されている電気自動車は搭載されている蓄電池を走行前に充電する必要があり、ソーラーカーの場合も太陽電池で蓄電池に充電しながらの走行が必要です。そこで今回の「Mg空気電池実験車両(仮)」の最大の特徴としては、電気自動車でありながら蓄電池を搭載せず、Mg空気電池の発電エネルギーをダイレクトに使って走行できることにあります。
このシステム開発には、まず電気自動車の構造を理解する必要があり、メンバーは工学部の「電気自動車の構造」をテーマとしたPBL授業(プロジェクト型学修)の中で車両の分解・組み立てを繰り返し行いました。最終的にTSCPにてマシンの⼼臓部といえる世界初の電装システムを構築してきました。
実レースでの『Mg空気電池実験車両(仮)』の走行実験成功は、資源循環型エネルギーをめざす社会において、再生可能エネルギーや省エネルギー技術の普及・開発にも、大きく寄与する意味のある取り組みとして評価されます。
太陽電池とMg空気電池のハイブリット車「未来叶い」3位入賞!
昨年、太陽電池とMg空気電池を組み合わせ、世界で初めて走行試験を成功させた2人乗り車両『未来叶い』もWGCに出場しました。こちらの車両は古河電池株式会社から提供を受けたMg空気電池を使用しています。 車体デザインは、工学部エンジニアリングデザイン学科の学生が担当。「再生可能エネルギーと資源循環型エネルギーの調和」を表現した2本の帯をマーキングしています。
車体やシステムへの数々の改良を施し、昨年度の課題をクリアし、より高い目標設定でレースに臨みました。途中機器トラブルにより思うような走行はできませんでしたが、後半持ち直し、3位を獲得することができました。WGCでは、タイムを競うレースだけでなく、車両のコンセプトや改良点などのプレゼンテーションも評価の対象となっています。TSCPチームは、モーターの改良やマグネシウムをエネルギー源として活用する未来の技術へ向かった取り組みを発表し、審査員から高評価を得ることができました。
今回のWGCを振り返り工学部エンジニアリングデザイン学科でTSCP監督の斉藤准教授は「昨年の『未来叶い』での成功をもとに今年はMg空気電池そのものの可能性に挑戦しました。今回の実験はご協力いただいたメーカーやたくさんの方々のおかげで成功することができました。解決するべき課題はありますが、マグネシウムが今後の社会においてエネルギーキャリア(燃料)のひとつになりうる可能性を示すことができたものと考えています。まだMg空気電池の性能をすべて引き出せているわけではないので、今後もシステムの改良を加えることでより安定して長距離を走行できるようしたいと思います。」とコメントを寄せてくれました。
今回の走行で得たさまざまなデータを活用し、『Mg空気電池実験車両(仮)』・『未来叶い』はさらなる改良を進めていきます。TSCPが取り組む「再生可能エネルギーと資源循環型エネルギーを調和させたハイブリッドシステムで走る自動車」ならびに「Mg空気電池を活⽤した新しい自動車」の研究開発にぜひご注目ください。