「第59回日本学生科学賞」都大会で、サイエンスクラブの生徒が最優秀賞、優秀賞、奨励賞を受賞しました。
未来の優秀な科学者育成のため、1957(昭和32)年に読売新聞社主催によって創設された日本学生科学賞。中学生と高校生を対象としており、その伝統から「科学の甲子園」とも呼ばれ、科学の実験や研究が好きな生徒の目標となっています。
第59回となる今年度、この日本学生科学賞東京都大会において、サイエンスクラブに所属している12年生の廣田宗士さんが最優秀賞、9年生の中間暖さんが優秀賞、11年生の堀祐里香さんと8年生の花村佳緒さんが奨励賞を受賞しました。玉川学園は過去に優秀賞の受賞はありましたが、最優秀賞は今回が初めて。受賞した廣田さんの研究は、東京都代表として中央審査に進みます。
サイエンスクラブは5〜12年生が活動しており、生徒はそれぞれ自分の興味のあるテーマについて、1年をかけて研究していきます。そのテーマは生物や化学から工学まで多岐にわたり、約20名の部員が日々研究に励んでいます。指導教諭の木内美紀子先生は「5年生から12年生までが一緒の教室で研究を進めるので、中学年は高学年の研究方法を参考にすることができます。そうやって徐々にレベルの高い研究に取り組んでいくので、高学年で大学レベルの研究に取り組む生徒も少なくありません」と話します。
そうしたレベルの高い研究に取り組めるのも、早い時期から課題研究に取り組む活動内容と同時に、文部科学省のスーパーサイエンスハイスクール(SSH)指定校であることや、同じキャンパスに大学の工学部や農学部がある一貫教育体制が大きなプラスになっています。また、5年生から12年生と活動期間が長いため、高等部を卒業する頃には進路を理系から文系の学部に変更する生徒もいるそうです。「ただ、このクラブで培った論理的思考や自主性、プレゼン力などは、どの分野に進んだとしても、また社会人になったときにも必要になるものです。身につけた力をそれぞれの活動の場で役立ててほしいですね」と、木内先生は語ってくれました。
入賞者のコメント
高校生の部
- 最優秀賞「天然物を用いた色素増感太陽電池」
12年 廣田 宗士(ひろた そうし)さん
物理の授業で太陽電池について学んだ際、まだまだ課題があることを教わりました。調べていくうちにより環境に優しい色素増感太陽電池の存在を知ったのです。昨年は、ブドウの皮に含まれるアントシアニン※1が色素として適していることを見出し、今年はさらに発電効率を上げるため、ブドウの皮からアントシアニンを単離して実験に用いました。
その結果、ブドウの皮に含まれている「酸」を添加することにより、アントシアニンの構造が変化し、より発電するようになることが分かりました。ブドウが年間を通じて販売されているわけではないので試料の確保に苦労したこともありました。努力が実り、このような賞をいただけて光栄です。
来年は12年生を卒業しますが、玉川大学農学部への進学が決まっています。将来は食品会社などで添加物の安全性などの研究に携わりたいと思っています。
※1…ブドウやブルーベリーなどに含まれている紫色の色素のこと
- 奨励賞「乳酸菌の性質を調べる」
11年 堀 祐里香(ほり ゆりか)さん
「なぜ牛乳は酸で分離するのか」というテーマで7年生のときに研究をスタートし、その後乳酸菌に興味を持つようになりました。乳酸菌は発酵食品であり、ヒトにとって身近で有用な働きをする菌です。特にヨーグルトに絞ってその性質を調べるとともに、そこに含まれている動物性乳酸菌、植物由来の植物性乳酸菌の体内での強さの比較を行いました。乳酸菌を単離するためには温度が非常に重要なので、温度調整したヨーグルトを放課後の実験で使用するため、昼休みにヨーグルトを冷蔵庫から取り出すといったことも。また祖母から米のとぎ汁にも菌が共生していると教わり、実験に取り入れたこともありました。来年は受験勉強のため今回が最後のチャンスだったので、賞をいただくことができて良かったです。
中学生の部
- 優秀賞「実用的な電池の開発」
9年 中間 暖(なかま はる)さん
化学の授業でボルタ電池について習ったことから、より身近なものを使って、より発電する電池の開発を行いました。条件を変えながら発電する電流や電圧を測定した結果、金属の種類が電圧に影響を与えること、金属が大きく・距離が近く・電解液濃度が濃いと電流が上昇することが分かりました。これらの結果を応用することで、電流が高く持ち運びしやすい電池が作成できました。また、5年生のときから研究していた高吸水性ポリマーの保水力を応用し、燃料電池を作成することもできました。今回は、ボルタ電池では電流を、燃料電池では電圧を高めることができました。環境に配慮しながら、たくさんの条件を変えて検討を行ったことが評価され、うれしく思っています。
- 奨励賞「お茶はなぜ変色するのか」
8年 花村 佳緒(はなむら かお)さん
6年生でサイエンスクラブに入部して以来、この研究を続けてきました。もともと紅茶が好きで、レモンを入れると色が薄くなることが気になっていたのです。そこで紅茶以外のお茶にも範囲を広げていきました。その結果、発酵茶・半発酵茶・不発酵茶3種類のお茶のpH※2を変化させると発酵茶が変色しやすいこと、放置しておくと不発酵茶が変色しやすいことを発見。そこでお茶のどの成分が原因で変色しているのかを調べました。不発酵茶に含まれるカテキンが酸化すると変色すること、カテキンはお茶を発酵させていくとテアフラビン※3に変化するため、発酵茶ではテアフラビンが変色の原因となっており、テアフラビンはpH変化で変色しやすいことを突きとめました。初めての応募で受賞できてうれしかったです。将来は、研究したことが社会に役立つ仕事をしてみたいです。
※2…酸性・アルカリ性の度合いを示す数値
※3…紅茶やウーロン茶に多く含まれる成分