学生が自ら"育つ"力を培う―「社会教育実習」で地域の子供たちと落花生を収穫
「社会教育実習」では、プロジェクト活動を通して問題解決能力の育成を目指すPBL(Project Based Learning)のアクティブ・ラーニングを取り入れており、本年度の学生は、児童館の子供達と共に落花生を育てることを企画しました。今回は、以前にご紹介した落花生を栽培するための「畑づくりのプロセス」のその後「種まきから収穫までのプロセスと学生の学び」をレポートします。
種蒔き:6月21日
本来は子供たちと一緒に種蒔きをしたかったのですが、今年は次々に台風が来たため、小雨の降る中、学生のみで種蒔きを行いました。作業は前に作っていた畝のトンネルを捲り上げることからスタートしました。マルチシート※に穴をあけてから、しっかり根付くように種を蒔いていきました。学生は、自然相手の農作業を通して、計画通りに行かない時には臨機応変に対応していく柔軟性が大事であることを学んだようです。






- マルチシートとは 作物栽培により適した土壌環境を作るために土壌表面を覆うプラスチックフィルムなどの資材
発芽! :6月27日
種蒔きから3日後の6月24日に畑に観察に行くと、芽が土を押し上げている感じに地割れしており、微かに芽が出ていました。27日には発芽を確認し、翌28日には落花生の実が双葉となり、可愛らしい本葉が育っており、自然と笑顔がこぼれました。学生たちは、植物の成長力と共に自らの成長につながる学びのあり方について改めて考えたようです。



児童館の子供たちと間引き作業:7月13日
1つの穴に3粒の種を蒔きましたが、成長の良い2本を育てるために、子供たちと間引きをすることにしました。子供たちを集めて作業をするだけでは、子供たちには作業をした記憶しか残りません。子供たちが楽しく作業を行いながら学べる企画を考えました。学生たちが考えたのは、野菜を守るヒーローと野菜嫌いの“ベジタブルキラー”の寸劇です。当日までに児童館との調整やポスター作り、当日の運営などもしっかり考えていきました。このように子供たちに親しみやすい設定を織り交ぜることで一見単純な作業も楽しむことができます。
その効果もあったのか、児童館に「子供がとても喜んでいたので、次も参加させたいが、いつですか」と保護者の方から問い合わせがあったそうです。学生たちは何事も全力で取り組むことの大切さに気付いたと共に、“仲間と協働すれば、できる!”と自信がついたようです。












成長を見守る:夏休み
植物が大きく成長する夏、学生たちは、夏休み中も交代で観察をし、落花生の成長を見守りました。8月中旬には青々と茂る葉の間から落花生を実らせる子房柄(しぼうへい)※が伸びている様子が見られ、順調な成長を確認することができました。しかし10月になると害獣(タヌキなど)に畑を荒らされ、農業の大変さを実感しました。
- 落花生は花のもとにある子房が伸び、地中に実らせます。受精して一週間もすると子房の 元が伸び出して、根のように下を向きます。この伸びた部分のことを言います



落花生の収穫準備:10月
いよいよ農作業も最終段階に入ってきました。子供たちとの収穫作業の前に防草シートを取り除き、2畝分の収穫をしました。収穫した落花生は皆で茹でて試食しました。学生たちにとってはすべての作業が初めてであったため、防草シートのたたみ方、畑を掘り起こすフォークを刺す角度、落花生の茹で方等、「分からないことだらけで、効率よく動くことはできなかったけれど、自分にとってはその分大きな学びになった」と、レポートにまとめていて、学ぶことの楽しさを実感したようです。






児童と落花生の収穫:10月26日
4月に企画を考え始め、農学部の有山先生に土地の測量から教わり、約半年を経て、ついに収穫です。この収穫の作業にも、ヒーローが登場します。ヒーローと再会した子供たちは大はしゃぎで畑まで移動しました。農場についた子供たちは学生と共に一致団結して収穫作業を行いました。学生は、子供たちの笑顔から達成感と共に、多くの人に支えられて企画が成功したことから、協働することの楽しさや信頼される人間関係を構築することの大切さなども学んだようです。








社会教育実習を終えた学生たちのレポートには、「活動を善くするためには、それぞれの主体性が不可欠である」、「責任感と同時に報告・連絡・相談の重要さを学んだ」、「やるべきことは積極的に関わらないと見つからない」、「人を巻き込むためには、まず自分自身が楽しまなければならない」、「挑戦はとても大切だと思う。自分が今まで生きてきた中では得られない学びがある」、「集団で何かを成し遂げることの大変さと充実感」、「学ぶことが楽しい」、「思いやりのある行動は相手を動かす」などの言葉が記されていました。また、学生全員のレポートに児童館の先生方や子供たち、農学部の先生方、ボランティア等への感謝の気持ちが綴られており、社会教育主事になるための力量のみならず、今後の生き方への示唆も得たようです。
社会教育実習を指導する中村香教授は、「植物と同じように学生たちは自ら成長する力を持っています。教育者は“育てる”と言うより、“育つ”環境を用意することが大切であると私自身、農作業を通して改めて学びました。今後も学内外との連携を図り、主体的・対話的で深い学びとなるアクティブ・ラーニングを積極的に行っていきたいです」と、語ってくれました。