「社会教育実習」の授業で農場体験を地域の子供たちに企画。総合大学だからこそできる実践的な学修
「社会教育実習」では、プロジェクト活動を通して問題解決能力の育成を目指すPBL(Project Based Learning)のアクティブ・ラーニングを取り入れており、毎年、学生たちが主体的に考えた企画を実施しています。

農学部総合農学研究センターの有山浩司先生に相談し、落花生を栽培することになりましたが、そのプロセスは学生の想像を超えるものだったようです。畑の測量から始まり、土づくり等、種を蒔くまでにはさまざまな作業がありました。栽培には種を蒔く時期があるため、学生は講義の空き時間を調整し、ボランティアの協力を得ながら農作業を進めました。
社会教育実習を指導する中村香教授は、農作業は「統合的な学習経験と創造的思考力」※1につながるのではないか。また、児童館やボランティア等と協働するために、主体性・働きかけ力・計画力・実行力・柔軟性等の机上での学びでは得られない「社会人基礎力」※2が培われているようだとその意義を話します。まさに「総合大学としてワンキャンパスにある玉川大学だからこそできる実践的な学修」であると説明していました。
- 1中央教育審議会答申「学士課程教育の構築に向けて」によると、学士力の1つに掲げられている「これまでに獲得した知識・技能・態度等を総合的に活用し、自らが立てた新たな課題にそれらを適用し、その課題を解決する能力」のこと
- 2「社会人基礎力」とは、「職場や地域社会で多様な人々と仕事をしていくために必要な基礎的な力」のことであり、経済産業省が2006年から提唱しているもの
<農作業1回目:畑の測量>
農場の作業では、有山先生より次つぎと問いが出されました。「太陽の向きから考えると東西南北は?」、「肥料の量を決める為に長方形に土地を区切り、面積を算出する方法は?」、「80センチ間隔で畝が並ぶように平行線を真っ直ぐに引くには?」、「発芽率80%で1箇所に3つずつ植えると、種はいくつ必要?」等の問いに、学生たちは体よりも頭がフル回転。「三平方の定理を使えば直角になる」等と教えて頂き、「数学が、こんなに大事だったとは!」と、口々に語っていました。



<農作業2回目:堆肥と肥料の計量>
次に畑の大きさや保証成分量などから堆肥と肥料の散布量を算出しました。たんぱく質・脂質・炭水化物が人間の3大栄養素であるように、植物には3大栄養素(窒素:N,リン酸:P, カリ: K)があり、Nが育て、Pが開花させ、Kが結実を促すということを学びました。学生は農業が学際的・総合的な学問であることを理解するとともに、肥料を計量するビニールの置き方一つで作業の効率が変わってくるので、何事にも頭を使うことが大事だと感じました。



<農作業3回目:土づくり>
農作業3回目は、堆肥と肥料を撒き、管理機で畑を耕しました。管理機は、有山先生が操作していると簡単そうに見えますが、目先ばかりを見ていると曲がっていき、思い通りには動きません。管理機の操作を通して、学生たちは何でも経験してみることが大切であり、皆で協力することの楽しさや意味を実感しました。






<農作業4回目:畝づくり1回目>
続いて紐を目安に畝つくりを行いました。周りの土を畝の上に軽く盛り、均したり叩いたりして形を整えてから、マルチ(作物栽培により適した土壌環境を作るためにプラスチックフィルムなどの資材で土壌表面を覆うもの)のための溝を掘ります。作業をしながら、落花生の花から伸びる子房柄が通過できるように生分解性マルチ(微生物によって分解されるマルチ)であることなどの知識のみならず、体の向きや農具の持ち方等の農作業の基本を一から教わりました。学生は、「使い終わった農具のレーキ(地ならしや草かきなどに使う熊手のような農機具)を畑に置く時にも、安全性を考えて置く向きを考えないと危険なので、常に考えないと…」等と語っていました。



<農作業5回目:畝づくり2回目>
1回目の畝づくりの半分の時間で、4本の畝を完成することができました。1回目の畝づくりに参加した学生たちが、未経験の学生に教えながら作業をし、「2回実践してみると、作業の意味がよくわかる」と言っていました。



<農作業6回目:不織布でトンネル作り>
カラス等の鳥に新芽を食べられないように、畝の上にグラスファイバー支柱でアーチをつくり、その上に不織布をかけてトンネルを作りました。グラスファイバーは跳ね上がると危険なので、畝を一つ置きに作業することや、農具の置き方や杭の角度等、農作業の全ての行程において、常に安全と効率を考えることが大事であることを学びました。



このようにこれまでの手順を学生たちが準備を進め、これで種を蒔ける状態になりました。子供たちと落花生を栽培している様子については、改めて紹介します。